

マグロとは、スズキ目・サバ科マグロ属(学名:Thunnus)に分類される硬骨魚類の総称。学名のThunnusはギリシア語で「突進」を意味する言葉に由来する。魚体が大きく遊泳力に優れ、分布域や回遊範囲が非常に広大なことが特徴。マグロの祖先は、熱帯地方の沿岸域に生息していたサバに類した魚で、その中から外洋域に分布を広げ進化してきたものとされている。サバ、サワラ類、ハガツオ、イソマグロ、ソウダガツオ、スマなどもマグロ類と近縁で、これらは沿岸や近海に住むが、カツオは外洋域に分布する。
日本人とマグロとの関わりの歴史は非常に古く、縄文時代の貝塚からマグロの骨が発見されている。江戸時代になると、日本沿海で獲れたマグロをそのまま捌き、ヅケにして食べていたとされる。現在では、脂の乗ったトロが人気ですが、元来、日本人はあまり脂を好まず、昭和の初め頃まではトロの部分はアラとして扱われ、焼いたり煮たりして脂を落としてから食べていた。しかし、高度成長期になり、食文化の西欧化とともに、脂っこい食事が好まれるようになると、トロの部分がもてはやされるようになり、今では、日本の食文化を象徴する大切な魚となっている。
日本語のマグロの語源は、目が大きく黒いことから「目黒」→「まぐろ」が由来とされる説や船の上から背が黒いマグロが泳いでいると、真っ黒な小山のように見えたことから「真っ黒」→「まっくろ」 →「まぐろ」となった説、常温で時間が経つと真っ黒になることから「まっくろ」→「まくろ」→「まぐろ」となったなど諸説がある。魚へんに「有」と書く漢字は、「有」には「外側を囲う」という意味があるので、外洋性、回遊性のあるマグロの生態を表している。
日本最古の歴史書である『古事記』の中には、「アユ」「タヒ」「シビ」「ワニ」「スズキ」の5種の魚名が記されている。この「シビ」とはマグロのことで現在でもよく使われるが、古来は「シビ」と呼ばれていた。地方名には、「ホンマグロ」「シビ」「クロシビ(各地)」「ハツ(高知)」などがあり、また、幼魚を指す地方名として「ヨコ」「ヨコワ(近畿・四国)」「メジ(中部・関東)」「ヨコカワ」「ヒッサゲ」などがある。

マグロは、スズキ目・サバ科マグロ属(学名:Thunnus)に分類される硬骨魚類の総称でクロマグロ、ミナミマグロ、キハダマグロ、メバチマグロ、ビンナガマグロ、コシナガマグロなどの種類がある。ちなみに「バショウカジキ」や「メカジキ」「マカジキ」などのカジキはサバ科ではなくカジキ科に属しており、マグロ類とは全く別の魚。
ここでは主なマグロのそれぞれの特徴や生息地について紹介します。
クロマグロ(=本マグロ) bluefin tuna
魚体の色と希少価値から「黒いダイヤ」とも称される最高級品種。まぐろの仲間では最も岸へ近づく種類で最大全長3m、体重700kgにも達する。地中海を含む大西洋に分布する「大西洋クロマグロ」と、日本近海から北米大陸西海岸にかけて生息している「太平洋クロマグロ」があり、同じくらいの大きさの個体が集まって群れをなし、時速80~90kmの高速で年間約3,000~5,000km回遊する。紡錘形の体は水の抵抗がとても少なく、また強力な筋力で高い推進力を得ている。さらに奇網という組織が発達しており、これが周囲の水温よりも体温を高く保って冷たい海でも高速な遊泳を可能にしている。5〜6月ころに卵を生み、その数は約1,000万粒といわれる。エサは肉食で、イワシ、ボラ、サバ、トビウオなどの小~中型魚を積極的に捕食し、成長とともにイカ類への依存度が高くなり、夜間はイカを捕食していることが多い。
インドマグロ southern bluefin tuna
クロマグロにとてもよく似た魚であるが、目が大きく胸鰭が長いこと、また尾柄側面の隆起が淡黄色であることで区別できる。魚類、頭足類(イカやタコ)、甲殻類(エビなど)を主な餌とし、体長2m、体重200kgになる。7歳で成魚となり、およそ1,500万粒の卵を生む。産卵期は9月から翌年の3月と推定されており、産卵場所は南緯10〜20度、東経100〜125度の狭い海域に限定される。別名ミナミまぐろといい、南半球に生息する事からそう呼ばれる。
メバチマグロ bigeye tuna
バチマグロとも呼ばれ、英語名の通り、目が大きいことからこの名前がついた。小型はずんぐりした体型からダルマ(幼魚)と呼ばれている。体長は体高のおよそ3.25倍。全長は2m、重さ150kg程度。まぐろの仲間では成長が早い方で、魚を好んで食べる。魚以外にも頭足類(イカ)や甲殻類を餌にしている。1mほどに成長すると約400万粒の卵を生む。産卵のために、また餌を求めて季節的な南北回遊を行う。
キハダマグロ yellowfin tuna
キハダ(黄肌)とも呼ばれ、黄色い体色からこの名前がついた。体型はほっそりスマート。体は紡錘形だがやや細めで、比較的頭が小さい。成長にしたがって、ヒレが著しく伸びる。メバチマグロが中層付近にいるのに対し、表層付近を回遊している。全長は1.5m、重さは100kg程度。
ビンナガマグロ albacore
ビンチョウマグロ、トンボとも呼ばれる。胸びれが著しく長く、名前はその姿から由来。小型のものは沿岸で竿釣りでも獲られ、大型のものは遠洋漁場の延縄で漁獲される。マグロ類中最も小型で、最大でも1.2mほどにしかならない。魚類、甲殻類、頭足類を主にエサとしている。クロマグロのように東西の太平洋を回遊する。
コシナガマグロ Thunnus tonggol
マグロの仲間では小型で、1mを超えるものもいるが、ほとんどは50cmほどの体長。全体は、ほかのマグロよりも紡錘形でやや細くなっているので一見カツオのように見える。胸びれ、第2背びれが長く、お腹の付近に白色斑が出ているのが目立つ。また、見た目にはわからないが、マグロの中で唯一浮き袋を持たないマグロ。魚類、甲殻類、頭足類をエサとする。

クロマグロ
日本を含む西部太平洋から東部太平洋、大西洋、地中海に生息。分布は全世界にわたるが、北半球に限定される。マグロの中で最も高緯度の海域(冷たい海)に分布。暖流に乗って日本沿岸を北上し、一部はアメリカ西海岸まで横断する。成魚になるにつれ、移動は、季節的な南北移動を繰り返す。
ミナミマグロ
別名のインドマグロが示すようにインド洋に多く生息し、アフリカ大陸の南端、ケープタウン沖やオーストラリア・ニュージーランド沖でも獲れる。クロマグロと対照的に南半球温帯地域に広く分布する。
メバチマグロ
全世界の熱帯・温帯に広く分布。キハダマグロと同じ範囲にいることが多い。赤道から南北に緯度35度程度に分布しており、地中海や日本海などには生息していない。
キハダマグロ
地中海を除く全世界の熱帯から温帯の広い海域に分布し、季節的な南北回遊をする。日本では北海道以南、中型魚が日本海で夏から秋にかけて漁獲されるが、地中海には生息していない。マグロ類の中で最も多く漁獲されている。
ビンナガマグロ
全世界の主に北緯40度から南緯40度までの表層から中層の外洋域に分布。キハダマグロやメバチマグロがいない地中海にも生息する。日本では北海道南部以南で見られるが、日本海で獲れるのは稀で、クロマグロ、ミナミマグロに次いで冷たい海を好む。
コシナガマグロ
日本からオーストラリアにいたる西部太平洋、東インド諸島、マレイ、インド洋に分布し、夏季に西日本近海に回遊してくる。
マグロは、日本近海はもちろん、アイルランド沖や北大西洋、カナダ沖、ボストン沖など、世界中の海で獲ることができる。味や品質にはそれぞれの場所で多少の違いがあり、自信を持って提供するためには、その中から最高のマグロを選別しなければならない。極上のマグロを求めて、北から南へ、西から東へ、マグロ大王は日夜、漁場から漁場へ飛行機や船で、時にはヘリコプターで7つの海を駆け巡る。
良いマグロの条件とは何か?
マグロが美味しくなる理由は、シーズンにあるんです。例えば青森県の大間だったら、シーズンはおよそ11月末から1月末くらいまで。「すしざんまい」がいつでも美味しいマグロを提供することができるのは、世界各所に漁場を持ち、世界の海を回遊しているマグロを一番いいシーズンに獲っているから。市場でマグロを仕入れるのは、資金があればできるという訳じゃありません。魚を知り、良い魚を選ぶ目を持ち、一人前の目利きとなって、質がいいマグロをちょっと高く買って、ちょっと安く提供するんです。
これからもマグロに限らず、世界各地の新しい漁場を開拓して、美味しいものを獲っていきます。「すしざんまい」を始める前は、漁場開発が専門で獲った魚を寿司屋や市場に卸していました。これから先もより良いものを提供していこうと思っています。どうぞ、ご期待ください!!

国内外のクロマグロの主な産地と漁獲シーズン、漁法は下記表の通り、それぞれ異なる。マグロの漁法には、「一本釣り」「延縄(はえなわ)」「旋網(まきあみ)」「定置網」がある。
「一本釣り」
最も古い歴史をもつ漁法で、長さ4~6メートルの竿を使って、漁船から釣り上げる。自動で糸を巻き上げる機械と、人間の手を使って、100キロ以上もあるマグロを引き上げ、最後は銛でえらの部分を刺して仕留める漁法。大間などでは、ソナーでマグロの群れを見つけ、その群れにエサをつけた針を投入し、釣り上げていく。大型のマグロになると、一匹釣り上げるのに、1~2時間もかかることがある。
「延縄(はえなわ)」
江戸期の延享年間(1744〜48)に房総半島の布良村(現・館山市)で始まった日本の伝統漁法です。日本の刺身市場に輸出することを目的として、マグロ延縄漁業はアジアの国を中心とする外国にも広がり、いまや国際漁業となっている。
はえなわの針は「幹縄」と呼ばれる1本のロープに「枝縄」という餌のついた針につながるロープが何本もぶら下がり、その間隔はおよそ5m。100mいって餌が2つしかないような密度。しかも餌の深度にも広がりがあり、100mから350mくらいの間に設置されるため、実際に水中では、なかなか餌を見つけられないくらいぱらぱらっとした分布となっている。
「旋網(まきあみ)」
1隻または2隻の船で、魚群を包囲してから網をしぼり、一度に大量の魚をとる漁法。 魚群のまわりに網を入れ、魚群を巻き取り一網打尽にする。カツオ、マグロ漁の他、主にアジやサバ、イワシなどの多獲性回遊の漁獲にも使われる。
「定置網」
産卵のためや、餌を求めて回遊する魚の通り道に、岸から沖に向けて垣根状の網を張りめぐらせて置き、魚群をこの網の中に導き入れてとる漁法。海に網を施設して、回遊してくる魚を引き込んで漁獲する。定置網は海面に網を施設し、回遊し網に迷い込んだ魚を漁獲する。回遊してきた魚は垣網にぶつかり、垣網に沿って、定置網本体に入ってきたところを捕らえる。アジやサバ、サケ(北海道・東北)ブリ(西日本)まで、多様な種類の回遊魚が獲れる。



本マグロは、捨てるところがないとよく言われるが、さまざまな部位がそれぞれの美味しさを秘めている。下記に本マグロの代表的な部位について紹介。大トロや中トロ、赤身以外にも本マグロの味わいを堪能できるたくさんの美味しさがあることを理解できるはず。
一般の方が意外と知らない本マグロの部位でお薦めなのが、はがしとろと中落のにぎり。その他にもマグロベーコンやマグロの皮のポン酢などがある。「すしざんまい」では、本マグロを丸ごと1本ずつ仕入れているので、こうした希少部位も提供することができる。ただし、数が少ないので、どうしても食べたい方は、事前に店にお問合せの上、ご来店ください。
①背節上(カミ)/中トロ・赤身
マグロの場合、基本的には腹側が高価であり、この背節(カミ、ナカ、シモ)の部位は、価格的には腹節下の次にあたる。脂の乗りも下(シモ)の次となるので、お値打ちな部位。中トロ〜赤身の部位となる。
②背節中(ナカ)/中トロ・赤身
背節上(カミ)、背節下(シモ)同様、お値打ちな部位。中トロ〜赤身の部位となる。
③背節下(シモ)/中トロ・赤身
腹の場合と同様に、背の場合もカミにいくほどスジが太く、シモにいくほど細くなるが、若干スジが変わる。中トロ~赤身に使用される部位。
④腹節上(カミ)/大トロ・中トロ・赤身
一般的に一番美味しいとされる部位。寿司屋で大トロと言われるにはこの部分で、マグロ自体の産地などにもよるが、高級店の大トロはこの部分が多く使われる。
⑤腹節中(ナカ)/大トロ・中トロ・赤身
中トロと大トロの間のような存在。寿司屋で大トロ・中トロとして出てくることの多い部位。
腹節上(カミ)より脂ののりは少ないが、脂のノリが強いのが中トロとなる。
⑥腹節下(シモ)/中トロ・赤身
一般的に中トロと呼ばれる部位。寿司屋で中トロとして、また割烹料理店などでよく使用される。程よい脂の乗りが特徴。料理用としても使用される。
⑦カマ
一般的にカマトロと呼ばれる部分。少数しか取れない貴重な部位で、牛肉の霜降りに似た、トロけるような味わいが特徴。
⑧その他部位
マグロは非常に多くの部位を使用できる魚。目周りのゼリー状の部分はDHAを非常に良く含み、トロトロして美味しい部位。ホホ肉、ひれカマ、頭肉、尾の身など様々な部分が美味しく食べられる。





本マグロの初競りとは、その年に初めて行われる市場での競り売りのことで、曜日に関係なく、毎年1月5日に行われる。2020年は、普段は休市となる日曜日にあたったが、例年通り1月5日に行われた。初競りの品物は、新年の仕事始めの「縁起物」でもあり、景気づけや商売繁盛、繁栄の意味を含み、縁起物ということで御祝儀的な高値が付くことが多く、特に「生本マグロの初競り」は、毎年その取引きされる金額が話題となり、その動向に注目が集まっている。2018年までは、築地中央卸売場で行われ、市場の移転に伴い、2019年からはその舞台を豊洲市場に移した。
初競りの生本マグロは、12月の下旬から1月3日までに全国の漁場で獲れた本マグロが市場に集まる。令和初となった豊洲市場の初競りには、70本を超える国産天然本マグロが競り場に並んだ。通常、生マグロの競りは、午前5時半に開始されるが、初競りの1月5日に限り、5時から東京都や市場関係者の年頭の挨拶の後、5時10分から一斉に開始される。競り値は、競り人の呼びかけと買い付け側の「手やり」と呼ばれる、指のサインのやりとりで決まる。
地方の市場では、買い手が木札や紙に書いた金額を競り人に見せる方法や金額が重なった場合は、買い手側同士がその場でジャンケンして決めるなど、市場によって競りのルールはさまざま。東京都では、競り場の喧騒の中で、価格交渉するための確実な手段として「手やり」が定着し、現在も引き継がれ、行われている。

人さし指は「1」、人さし指と中指をそろえて出すと「2」。人さし指を立て、いったん下ろしてから、もう一度出すと「1・1(ピンピン)」。人さし指を立てたまま、中指を立てたり下ろしたりすると「1・2(インニー)」を表す。これが、1100円、1200円を意味するのか、1万1000円、1万2000円を意味するかは、魚種やその時々の相場によって変わってくる。
注1)「11」「22」「33」など、同じ数字が二つ並ぶ場合は、各々「手やり」を左右に振る。
注2)「12」「13」など、異なる数字が並ぶ場合は、各々の「手やり」を組み合わせる。
注3)「101」「203」「305」など、ゼロ表示が必要な場合は、「

生マグロの競りは、1kgの単価で競われ、複数の「手やり」の中から、最も高い値段を出した人が目的のマグロを競り落とすことができるが、複数の買い手の中から、どうしても競り落としたい場合、さらに高値を出して価格を釣り上げてく。マグロ1本の競りは早ければ5秒ほどで決着する。買い付ける側も真剣勝負だが、競り人もいくつも上がる手の中から、瞬時に最も高い値付けをしている人を見極めて価格を決めていかなければならない。
「すしざんまい」は、2001年の「すしざんまい本店」開業以来、毎年この「生本マグロの初競りに参加」し、その年の初競りで1本の本マグロとして落札価格が最高値となる通称「一番マグロ」を幾度となく落札してきた。2012年には、5千649万円、2013年には、後に世界記録として認定される1億5千540万円と2年連続で最高値を更新。さらに、2019年には、これらを上回る3億3千360万円で落札。これが現時点での史上最高値の落札金額になっている(*下表参照)。

しかし、初競りで本マグロを購入するのは、「初競りで一番いいマグロを買って、お客様に振舞い、喜んでもらいたい」というただその一念から。競り合う相手もあって、結果、想定以上の高値となってしまっているが、決して、高値で「一番マグロ」を落札することが目的ではない。この思いは変わることなく、これからも臨み続けていくが、ここ数年の落札価格は、さすがに行き過ぎていると感じるので、平常のご祝儀価格になることを願っている。
